2023.08.08 2023.08.09
Cookieは、個人情報を活用し、Webサイト上でのユーザー体験(UX)を向上させることを目的として利用されています。
例えば、ログイン情報を再入力する手間を省いたり、あるユーザーに対して関心のある広告を表示させやすくするといったものです。
しかし近年、Cookieによる個人情報の取得・活用が、プライバシー保護の観点から日本を含む世界各国で問題視され、規制する動きが広まっています。
本稿では、Cookieの概要や活用例を図解で解説した後に、Cookie規制の理由とその対策を解説します。
目次
Cookieとは?
Cookieとは、Webサイトへアクセスした際に、アクセスしたユーザーのログインIDやサイトへのアクセス履歴、カートに追加した商品の情報などを一次的に保存するファイルのことです。識別IDにより、同一ユーザーであるかを判別できます。また、これらはアクセスした際に使っていたGoogle ChromeやSafari、Bingなどのブラウザへと保存されます。
このことからCookieの活用により、ユーザー側からはWebサイトを閲覧する際の利便性向上や、広告主側からは効率的なマーケティング活動が行われてきました。しかし、個人情報保護の観点から、GoogleやAppleを始めとする大手プラットフォーマーが一部Cookieの使用規制を進めており、これはデジタルマーケティングの面で様々かつ大きな影響を及ぼします。
【図解】Cookieの種類と活用方法
ここでは、Cookieの種類とそれぞれの活用方法について、具体例を交えながら解説します。
Cookieの種類
Cookieの種類としては、以下の3つです。この中でも、Cookieとして主に使われるものは1st Party Cookieと3rd Party Cookieになります。
Cookieの種類 | 発行元 | 閲覧性 | 主な使用例 |
1st Party Cookie | 閲覧ページのドメインからCookieを発行 | 発行されたCookieは別サイトから閲覧できない |
|
3rd Party Cookie | 閲覧していないページのドメイン(第三者)からCookieを発行 | 発行されたCookieは別サイトから閲覧できる |
|
これらのCookieについて、それぞれ解説します。
1st Party Cookie(ファーストパーティークッキー)
1st Party Cookieとは、ユーザーが訪問したサイトのドメイン(サイト、ホームページの運営側)が直接発行するCookieです。訪問ユーザーに対して、自社運営サイト内で行った行動に対してのみ高精度なトラッキング(追跡)が可能ですが、他のサイトを跨いでのトラッキングはできません。
また、保存できる内容としては、サイトへ訪問したユーザーのログインID・パスワード、入力した情報、買い物カゴの内容などです。
つまり、以上の情報を活用することによって、次回ログイン時の手間を省いたり、以前買い物カゴに入れたが買わなかった商品を探す手間を省くという形で、ユーザー体験の向上を図ることができます。
2nd Party Cookie(セカンドパーティークッキー)
2nd Party Cookieとは、ユーザーが訪問した他社サイトのドメインで発行したCookieです。しかし、見方によっては1st Party Cookieであると見なすこともできるため、明確な定義が存在しません。つまり、おおまかなイメージとしては、1st Party Cookieを第三者へと提供したCookieデータが2nd Party Cookieになります。
3rd Party Cookie(サードパーティークッキー)
3rd Party Cookieとは、ユーザーが訪問したサイトのドメインではない第三者が発行したCookieです。主に、Google、Yahoo!、Microsoftなどの広告媒体が発行しており、こちらはサイトを横断してのトラッキングが可能です。そのため、活用することによって効率的なマーケティングや、マーケティングの効果測定ができます。
例えば、以前インターネット上で閲覧していた商品が、別のサイトで広告として表示されたという経験がある方は多いかと思います。この現象は、サードパーティークッキーを活用した広告配信により起きています。
しかし、3rd Party Cookieは個人情報保護の観点から、規制が特に厳しく行われています。そしてこの規制は、デジタルマーケティングにおいてコンバージョン計測やターゲティングなど、様々な方面で影響をもたらします。
Cookieはなぜ規制された?
Cookieが規制されるようになった背景には、3rd Party Cookieの問題が顕在化したということが挙げられます。例えば、以前Web上で買い物をした際に、似たような商品が広告として表示される際に「勝手に個人情報を使われている」「監視されている」と感じるユーザーの声があるというようなことです。
このことから世界的には、プライバシー保護の観点から「GDPR」やアメリカ・カリフォルニア州の「CCPA」を始めとするCookieを規制する動きが広まっています。
ここでは、個人情報を利用するCookieを巡ったユーザーとの衝突事例を紹介します。
Google、Facebookに対し、約270億円の制裁金
Cookieのガイドライン違反により2022年1月6日、フランスのデータ保護機関であるCNILがGoogleに対し1億5000万ユーロ(約193億1100万円)、Facebook Ireland*に6000万ユーロ(約77億2400万円)の制裁金を科しました。
理由としては、Cookieの同意手続きの方法について、拒否するための手続きが同意するための手続きに比べて煩雑であることがデータ保護法第82条およびそれに関するガイドラインに違反するというものです。
「リクナビ問題」の発生
Cookieを巡る問題は日本でも発生しています。
2019年8月1日、日本経済新聞などは、リクルートキャリアがサイトの閲覧履歴をもとに内定辞退率を予測・提供していたことを報じました。このことにより調査が進められ、結果として内定辞退率に関わる個人情報を、本人の同意取得や十分な説明をせずに取引先企業に販売していたことが判明しました。
そしてこの事件も要因の一つとなり、2022年4月施行の改正個人情報保護法で「提供先が保有する情報と結びつけることで、個人情報の取得へ繋がる可能性のある情報(Cookieなど)を第三者へ提供する際には、提供先へユーザー本人から同意を得ていることを確認しなければいけない」という規則が追加されました。
Cookieに関連する2022年4月施行の改正個人情報保護法については、個人情報保護委員会の記事にて「個人関連情報」という部分でわかりやすくまとめられているため、こちらをご確認ください。
令和2年改正個人情報保護法 特集
Cookieの規制で発生するマーケティングへの影響
では、実際にCookieが規制されることが、どのようにマーケティングへ影響を及ぼすのかについて解説します。
ターゲティングがより困難に
ターゲティングにはいくつか種類があり、その中でも特に多く活用されているオーディエンスターゲティングがCookie規制の影響を強く受けます。
オーディエンスターゲティングとは、その人の興味関心や、性別、年齢などの属性に基づき行われるターゲティングで、今までこれらの情報はCookieを活用することによって高精度かつボリュームのあるものになっていました。
そのため何の対策もしていない場合、Cookieで得ていた情報が使えなくなる分だけ、ターゲティング広告の精度が低下すると共に配信量も減少します。
CV(コンバージョン)計測精度が低下
従来はCookieによってユーザーをトラッキングし、コンバージョンを計測していました。
つまり、Cookieが規制されることでCookieで計測していた分だけ広告媒体側のコンバージョン計測ができなくなり、コンバージョン計測精度が低下します。
アトリビューション分析精度が低下
アトリビューション分析とは、コンバージョンへ至った全ての接触経路に対し、それぞれのコンバージョンへの貢献度を計測することです。例えば、自然検索や広告などがこの対象に含まれます。
そして、これらを計測するために3rd Party Cookieは大きな役割を果たしてきました。そのため、Cookieの規制によりアトリビューション分析の精度が低下すると考えられます。
自動入札の精度が低下
自動入札の仕組みとして、コンバージョンデータが多ければ多いほどより高精度な自動入札が行われるものとなっています。そのため、Cookie規制は自動入札の精度にも影響を与えます。
Cookie規制へのマーケティング対策
ここからは、Cookie規制へどのように対策していくのかについて、具体例を交えながら解説します。
対策の方法については、大きく2つに分けられます。
Cookieへ依存しない再接触を考える
ここでは、現状で取得できる顧客データを活用し、過去接触ユーザーにリーチする施策を紹介します。
カスタマーマッチ
リターゲティングという方面において効果的な対策が、カスタマーマッチという手法です。
カスタマーマッチとは、自社が保有する顧客データを各プラットフォームにアップロードし、各プラットフォームが保有する情報と照合したユーザーをリストアップします。
その後、このリストを活用して広告配信を行う手法を指します。
カスタマーマッチの利用により、Cookie規制後もリターゲティングや、新規顧客に向けたマーケティング活動がCookieを用いることなく可能です。
カスタマーマッチについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、合わせてお読みください。
エンゲージメントターゲティング
エンゲージメントターゲティングとは、自社のTwitter、FacebookなどのSNSへのエンゲージメントを元に、ターゲティングすることです。例えば、自社の投稿に対して「いいね」や「ブックマーク」を行ったユーザーへ、その投稿と関連性のある広告を配信することが可能です。
そのため、好意的な印象を抱いているユーザーへアプローチできるものとなっています。
フォロワーターゲティング
フォロワーターゲティングとは、TwitterやFacebookなどで、指定したアカウントをフォローしているユーザーをターゲティングする手法です。LINE公式アカウントの友だちもこれに該当します。
また、Twitterにおいては、自社に好意的なユーザーだけでなく、競合となるコンテンツ・商品を提供しているアカウントをフォローしているアカウントなどをターゲティングすることで、将来顧客となる見込みの高いユーザーに対してアプローチできます。
オーディエンス・コンテンツターゲティングを活用
ここでは、追跡以外のターゲティングを活用するマーケティング施策について紹介します。
コンテンツターゲティング
コンテンツターゲティングとは、指定したキーワードやトピックと関連性の高い配信面に広告を配信することです。
例えば、「メンズ 服 オシャレ」の検索結果として表示されるサイトの広告枠に広告を配信することで、上記のコンテンツに好意的・意欲的なユーザーへのアプローチができます。
カスタムセグメント×ファインド広告
カスタムセグメントとは、特定のサービスやトピックに高い興味関心・購買意欲の高いユーザーへとアプローチできる機能です。
また、ファインド広告とは、Googleが提供するYouTube Home Feed、Gmail、Discoverの広告枠に配信できる広告のことです。そしてこの3つは、Googleが保有するサービスの中でも特にユーザー数が多いサービスです。
ファインド広告は、Googleのプラットフォームが配信面であることから、Googleが保有するユーザーの興味関心データ等を活用することができます。これらをかけ合わせることによって、例えば、「〇〇を検索したユーザー」へのリーチが可能です。つまり、検索ユーザーへ再アプローチができます。
類似ターゲティング
類似ターゲティングとは、既存顧客や自社のサイトを訪問したユーザーと類似した属性や検索行動、興味関心を持っているユーザーへターゲティングすることです。これにより、新規顧客を効率的に獲得できます。
※Google広告では、2023年8月1日より、最適化されたターゲティングによってのみ可能となるアップデートが入りました。
最適化されたターゲティングについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、合わせてお読みください。
まとめ
いかがでしたか?
Cookie規制は、デジタルマーケティングにおいて様々な面で影響をもたらします。
そのため、Cookieへの正しい理解をした上で対策を講じることが、今後マーケティングを行うにあたってより重要になってきます。
本記事が、Cookie規制でお困りの皆様のお役に立てれば幸いです。
marke@bcj
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