2025.11.06 2025.11.06
2024年、Google検索に新たに搭載された「AI Overview(エーアイ・オーバービュー)」機能が、検索体験とSEOの在り方に大きな変化をもたらしています。
本記事は、Bruce Clay Inc.のブログ記事「How Google’s AI Overviews Are Changing Click Behavior and SEO Metrics」を参考に、ブルースクレイ・ジャパンにて意訳・再構成したものです。
新時代のSEO「SEO2.1」については以下の記事で詳しく説明しています。合わせてご覧ください。
目次
AI Overview(AIO)時代の到来がSEOに与えるインパクトとは?
一見すると便利なこの機能ですが、実はユーザーのクリック行動や、サイト運営者にとってのSEO戦略にまで深刻な影響を及ぼしていることが明らかになってきました。特に、クリック率(CTR)の変化、インプレッションの質、Googleが提供するサーチコンソールのデータの見方など、今までの常識が通用しなくなりつつあります。
AI Overviewとは?GoogleのAIO機能の仕組みと目的

「AI Overview(AIO)」とは、Googleが導入した検索機能で、ユーザーの検索クエリに対して、生成AIが複数の情報ソースを統合し、自動で回答を要約表示する仕組みです。以前は「SGE(Search Generative Experience)」として実験的に展開されていましたが、2024年以降正式に導入され、2025年には本格的に検索体験の中核となりつつあります。
AI Overview(AIO)のインパクト:月間15億インプレッション
2025年第1四半期のデータによれば、AI Overviewは月間15億インプレッションを記録しており、これはそれだけの回数、検索結果の最上部にAI生成の要約が表示されているということです。 ユーザーが情報を「クリックして取りに行く」のではなく、「Googleが提示する要約を読む」スタイルに移行している兆候だと言えるでしょう。
参考:Google’s AI Overviews Reach 1.5 Billion Monthly Users
Google関係者の解説「AI Overview(AIO)の目的は“先回り”」
2025年3月に開催された「Google Search Central Live NYC」にて、GoogleのDanny Sullivan氏はAI Overviewの意図について次のように語っています。
-
ユーザーが次に知りたくなることを先回りして提示する設計
AI Overviewは、ユーザーが入力していない内容でも、次に欲するであろう情報を含めて要約を生成します。 -
検索順位よりも「要約との関連性」を重視
AI Overview内に表示されるリンクは、従来の検索順位とは無関係です。ランキングが高くても、要約との関係性が薄いページは表示されません。 -
視点の多様性を優先し、冗長な情報を避けるよう設計されている
-
高品質で専門性の高いコンテンツは引き続き評価される
Sullivan氏は、「SEOの基本原則は今も変わっていない」と強調しており、特定の質問に明確に答えているページ、専門性を示せるコンテンツはAIO内でも目立つ傾向があると述べています。
参考:Google Search Central Live NYC: Insights On SEO For AI Overviews
これからのSEOで求められる視点
このように、AI Overviewとは「ユーザーが質問する前に答える」ことを目的とした検索の進化形です。SEO担当者にとって重要なのは、「単に検索クエリに一致するコンテンツ」を作るのではなく、検索意図の先回り、信頼性、専門性、視点の多様性といった新たな基準を意識したコンテンツ制作です。
AIOの世界では、「検索結果に表示されたかどうか」ではなく、「AIに選ばれる情報かどうか」が新たな勝負の分かれ目になってきています。
AI Overview(AIO)によるクリック率(CTR)への影響
GoogleがAIOを正式に導入して以降、検索結果におけるユーザーのクリック行動(CTR)は大きく変化しています。従来のSEOでは「検索順位を上げる」ことがアクセス増加に直結していましたが、AIOの登場によってその前提が崩れつつあります。
ファーストビューを占拠するAI Overview(AIO)
AIOは検索結果の最上部に表示され、スマートフォンではスクロールしないとオーガニック検索結果が見えないケースも珍しくありません。そのため、従来ならクリックされていたはずの1位〜3位のページも、「要約を読んで満足する」ユーザーによってスルーされる状況が起きています。
「CTRが下がる」は一面的な見方?
確かに、AIOは検索結果内で直接回答を表示するため、ユーザーがリンクをクリックせずに満足するケースが増えています。しかし、すべての業界・検索クエリにおいてクリックが減少しているわけではありません。
たとえば、Advanced Web Rankingが実施した2024年Q4の調査では、以下のような傾向が報告されています。
CTRが低下した領域(主に情報検索クエリ)

- 「what」「when」「how」などの情報収集系キーワードでは、AIOが表示された際、上位4位までの上位サイトでCTRが合計7.31ポイント低下
- 特にデスクトップ検索で顕著に影響が見られる
CTRが逆に上昇した業界も
一方で、同調査では以下のような業種・分野でCTRが上昇している事例も確認されました。
- 法律・政治分野:CTRが7.39ポイント上昇、検索需要も68.66%増加
- 教育分野:トップ結果のCTRが約6%上昇
これは、ユーザーがより専門的で深い情報を必要とするクエリに対しては、AIOの要約を見た上で、出典元を確認するクリック行動が促進されている可能性を示唆しています。
ユーザーの「検証行動」がCTRを押し上げることも
さらに、TrustRadiusの調査によると、B2Bの購買担当者の90%が、AIOに表示された情報を確認するために出典元のリンクをクリックすると回答しています。これは、「生成AIの要約をそのまま鵜呑みにせず、自分で裏取りをしたい」というニーズが一定層に存在することを裏付けています。
この傾向は特に以下のような場面で強まります。
- 高額な意思決定を伴うB2Bサービス選定
- 医療・法律など専門性の高い情報を扱うシーン
- 複数の視点や証拠が必要な分野(例:政治、教育、学術など)
反対にゼロクリックが増えているケースも

一方で、Semrushが2025年5月に実施したAIO調査では、AIOが表示されるキーワードは「ゼロクリック」の傾向が顕著に高まっているという結果も出ています。この傾向は特に定義・概要・事実ベースの簡潔な質問に多く見られ、要約だけで完結してしまう検索クエリに対しては、クリックが発生しづらいことを示唆しています。
CTRは「絶対指標」ではなくなった
AIO時代のSEOでは、「クリック率が高い or 低い」だけでは評価を下すことができません。検索クエリの意図(インテント)や業種の特性、そしてユーザーの行動心理によって、AIOが与える影響は大きく異なるのです。
さらに、Googleは業界別やクエリ別のAIO影響データを詳細には公開しておらず、Web担当者やマーケターは自社サイトのパフォーマンスを独自に計測・分析していく必要があります。
参考:Google hypes AI Overviews, refuses to answer CTR question
AI Overview(AIO)対策としてのSEO戦略とは?
「SEOは終わった」と言われることもありますが、Google Search Central Live NYCでDanny Sullivan氏が明言したように、SEOは今もなお重要です。ただし、AIOが表示されるようになったことで、「やるべきこと」や「測るべきこと」が少しずつ変わってきているのは確かです。
この章では、AIO時代における新しいSEO戦略と、注目すべき新たな指標について紹介します。
1. 従来の指標では成果を測りきれない
AIOによって検索体験が変化したことで、「順位が上がったのにクリックが減った」という現象が起こるようになりました。これは、AIOによって情報が要約され、ユーザーがリンク先にアクセスしなくても疑問を解消できてしまうからです。
そのため、従来のCTRやセッション数だけでは、もはやコンテンツの効果を正確に評価できない場合もあります。重要なのは、「検索での表示=ブランディング効果」や「認知拡大」といった新しい評価軸を導入することです。
2. ユーザー理解から始まるコンテンツ戦略
AIOに選ばれるには、ユーザーの本質的な課題を捉えたコンテンツ設計が欠かせません。そのためにはまず、マーケティングの基本に立ち返り、「誰の、どんな悩みを解決するのか」を明確にすることが重要です。
実践ポイント
- ペルソナ設計や検索意図分析を通じて、ユーザーの「知りたいこと」を具体化
- 表面的な情報ではなく、独自の視点や実体験を含む深いコンテンツを構築する
- 専門家の知見や、実際のデータ・事例を取り入れて信頼性を高める
AIOは、単に「キーワードが入っているページ」ではなく、ユーザーに価値ある答えを提供するページを優先して引用します。
3. 構造とフォーマットで「AIに理解されやすく」する
AIOが情報を抽出する際には、ページの構造やマークアップも大きな影響を与えます。GoogleのAIがあなたのコンテンツを正確に理解できるようにするためには、情報の整理と明確な構造化が不可欠です。
対策の例
- 見出し(h2・h3)を適切に配置し、情報の流れを明示
- 箇条書き・表・ステップ形式など、視覚的に整理されたコンテンツを活用
- 構造化データ(Schema.org)を活用し、FAQ、How-to、製品情報などに対応
- セマンティックHTML(strong、section、articleなど)で文脈を明確にする
こうした施策により、AIOが自社のコンテンツをより正確に理解・引用できるようになります。
4. AIOでの「可視性」をトラッキングする
AIOによってクリックが発生しない場合でも、AIに回答として引用されたという事実そのものが「認知効果」を生む可能性があります。
まずは観察から
- AIOで自社サイトが表示されたかどうか、検索結果を手動で確認する
- 出典元として掲載された場合は、ブランド認知や専門性のアピールにつながる
- 現時点では明確なトラッキング手段はないため、SERPを観察・記録することが重要
5. Google-Extendedの利用判断も重要
Googleは、生成AI(例:Gemini)による要約に自社のコンテンツが使用されるかどうかをコントロールできる 「Google-Extended」という仕組みを提供しています。
これは、AIの訓練・要約に自社の情報を使わせたくない場合に活用できますが、同時にAIOに引用されるチャンスを失うことにもつながる可能性があります。
したがって、
- 自社のブランド戦略や情報公開方針
- AIOへの露出による利点とリスク
を天秤にかけながら、Google-Extendedタグの適用有無を戦略的に判断する必要があります。
6. AIOでも上位表示されているページが有利
AIOに表示されるリンクは、必ずしも従来の検索順位に従っているわけではありません。しかし、実際の調査によると、上位表示されているページの方が引用されやすいというデータもあります。
たとえば、Rich Sanger氏とAuthoritasによる調査では、
- AIOに引用されるリンクの約46%は、通常の検索結果で上位10位以内にある
- 上位20位までに入っているページが、引用される確率が大きく高まる
AI Overview(AIO)時代の検索体験とSEOの未来
AIOが検索結果に本格的に導入されたことで、Google検索の役割そのものが大きく変わりつつあります。従来の「検索 ➡ 情報を探す ➡ クリック」というプロセスから、「検索 ➡ AIOが要約して答える」というプロセスへの移行が進行中です。
この変化は、ユーザーの検索体験を大きく進化させる一方で、SEOにおける考え方や戦略も根本から見直す必要があります。
「10個の青いリンク」から「1つの要約」へ
従来の検索は、検索結果ページ(SERP)に複数のリンクが並び、ユーザーが自分で情報を取捨選択してクリックする形式が基本でした。しかしAIOの導入によって、検索画面の最上部にGoogle自身が生成した回答の要約が表示されるようになり、ユーザーはクリックせずに情報を得るケースが増えています。
つまり、今や 「答えが1つにまとまって提示される」検索へと進化しているのです。この変化により、次のような未来像が現実のものとなりつつあります。
- 検索体験は“調べる”から“教えてもらう”へ
- SEOは“順位争い”から“要約される価値の提供”へ
- クリックされなくても“印象を残す”ことが評価される時代へ
ユーザー体験重視の流れがより一層加速する
Googleは以前から、ユーザー中心の検索体験を追求する方向に進んでおり、AIOの登場はその流れを一段と強化するものです。たとえば以下のような価値を持つコンテンツは、AIOでも選ばれやすいと考えられます。
- 複数の視点をバランスよく紹介している
- 初心者にも理解しやすいように配慮されている
- 情報の正確性が高く、根拠や出典が明確に示されている
- 検索意図に対して包括的かつ深掘りしている
今後は、「検索キーワードへの最適化」ではなく、「ユーザーの問題解決への最適化」が重要な評価軸になっていくでしょう。
今後の展望:検索とAIの融合はさらに進む
Googleは今後も、Geminiのような高度な生成AIと検索の融合を深めていくと見られています。 その中で、検索結果におけるAIOの表示機会や精度はさらに増すでしょう。
また、今後の動向としては、
- パーソナライズされたAIO要約
- 対話型AIとの連携(検索 ➡ 会話へ)
- コンテンツ作成と検索体験のさらなる近接化
といった変化も起こると予想され、SEOとコンテンツ制作の境界はますます曖昧になっていくでしょう。
検索におけるAIの役割は、「情報を探す手段」から「情報を届ける主体」へと移行しています。 この大きな変化に対応するためには、私たちも “AIに選ばれる情報”をどう作るかという視点に立って、コンテンツを見直していく必要があります。
AI Overview(AIO)時代のSEOで最も重要なのは「信頼される情報づくり」
Googleの検索体験は、AI Overview(AIO)の登場によって大きく変わりつつあります。 ユーザーは従来のようにリンクをクリックして情報を探すのではなく、検索した瞬間にAIによる要約で答えを得るというスタイルへと移行しています。
この変化により、私たちがこれまで「常識」としてきたSEOの考え方も、大きな見直しが必要になっています。
AI Overview(AIO)に関するよくある質問
AI Overview(AIO)の使い方は?
AIOは、特別な設定なしでGoogle検索に表示される機能です。ユーザーが検索キーワードを入力すると、Googleが自動的に複数の情報を統合し、生成AIによる要約を検索結果の最上部に表示します。
現在のところ、表示・非表示をユーザー側で切り替える機能はなく、対象となるクエリや検索条件に応じて自動的に表示される仕組みです。
AIOとSGEの違いは何ですか?
AIO(AI Overview)は、以前Googleが提供していた実験機能「SGE(Search Generative Experience)」の正式版にあたります。SGEはベータテスト的に提供されていた生成AIによる検索要約機能で、AIOはそれを正式にリリースしたものです。
| 項目 | SGE(旧) | AIO(現) |
|---|---|---|
| 提供時期 | 2023年〜2024年(実験段階) | 2024年後半〜本格導入 |
| 表示条件 | Labs参加ユーザー限定 | 一般検索ユーザーにも段階的に展開中 |
| 位置づけ | 検証中の新機能 | Google検索に組み込まれた主要機能 |
| 精度・仕様 | 試験的・精度にばらつきあり | 多様な視点と冗長性排除に配慮された最適化版 |
自分のサイトがAI Overviewに表示されているか確認する方法は?
現時点では、Google Search ConsoleではAIOへの表示データを確認する手段は提供されていません。そのため、確認方法としては以下のような手動チェックが有効です。
- 特定のキーワードでGoogle検索を行い、AIOの要約に自社サイトが引用されているかを目視で確認する
- ブランド名や商品名など、自社固有のキーワードでの表示を継続的にモニタリングする
- 表示された場合は、スクリーンショットなどで記録し、社内共有・分析に活用する
今後、GoogleがAIOの表示データをSearch Consoleなどで提供する可能性もあるため、公式のアップデートにも注目しておくとよいでしょう。
SEOコンサルタントチーム
さまざまな業種業態のサイトのSEO対策の経験を経たSEOコンサルタントがSEO対策におけるお役立ち情報を発信します。 ”SEO”の生みの親であるブルースクレイからローカライズした内部施策をはじめとするSEOのノウハウをわかりやすくお届けします。
BCJメールマガジンのご登録
最新のセミナー情報やお役立ち情報をメールにてお届け致します!
-
データと社員の声でひもとく、ブルースクレイ・ジャパンの“リアル”な魅力とクライアント成果を生む現場の在り方
2025.11.05
View more
-
AIとSEOの新時代「SEO 2.1」──検索エンジン最適化はどこへ向かうのか?AI対策についても紹介!
2025.10.28
View more
-
ジム・フィットネス業界の集客を最大化する広告戦略【完全ガイド】媒体・費用・代理店の選び方まで徹底解説
2025.10.09
View more
-
【2025年最新版】リスティング広告代理店おすすめ15社を徹底比較!費用相場・選び方・失敗しないコツ
2025.09.16
View more
-
【失敗と成功から学ぶ】サイトリニューアルでSEOの成果が下がらない方法とは?事例をもとに15の注意点を紹介!
2025.08.04
View more
-
2025年上半期、広告業界はどう動いた?広告エキスパートと振り返る最新トレンドと下半期の見通し
2025.07.23
View more














