2023.12.25 2023.12.25
BtoBマーケティングでの広告運用に頭を悩ませていませんか?
BtoBの領域では、効果的な広告戦略は更なるリード獲得や事業拡大に直結します。
「BtoB Marketing / Sales UPDATE 2023」にて、アナグラム株式会社とブルースクレイ・ジャパン株式会社がセッション形式で登壇したセミナー内容を、レポート形式でお伝えします。BtoB事業のマーケターの方はぜひ、ご覧ください。
登壇者紹介
二平 燎平
アナグラム株式会社 運用型広告事業部マネージャー
BtoB中心に数十社以上の広告運用やコンサルティングを経験。前職での中小企業向けERPのセールスやCS、マーケティングなどTheModelの全工程に従事した経験と運用型広告の知見を合わせた売上を伸ばすBtoBマーケティングコンサルティングに定評があり、アナグラム社では主にBtoB向けの支援や情報発信を担当。
里村 仁士
ブルースクレイ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
2010年よりブルースクレイ・ジャパン株式会社のウェブ広告事業の立ち上げに参加。事業責任者として部署を統括。運用メディアの拡大、ナレッジ構築、システム整備、人材採用・教育、セミナー開催などを行い、ウェブ広告業を中心にビジネスキャリアを積む。 2013年、国内で5人目のGoogle広告 トップコントリビューターとしてGoogle社より認定。Google社の公式イベントにも複数登壇。事例発表、パネルディスカッションなどを行う。2022年12月、同社の代表取締役社長に就任。
第1部:BtoBにおけるウェブ広告の役割
1-1.BtoB広告のコンバージョンと目標設定について
田北:
はじめはBtoBにおけるウェブ広告の役割というテーマで、お話できればと思います。
事前にいくつかテーマを準備しておりまして、皆様からのご要望や時間との兼ね合いでトピックを選びながらお話できればと思います。
最初のテーマは一番関心の高そうな、「BtoBのウェブ広告におけるコンバージョンの設定と目標設定について」でお話ししていければと思うんですけれども、始めに二平さんにお伺いしてもよろしいでしょうか?
■コンバージョンの階段設計が重要
二平:
はい、わかりました。
セミナーに参加されている方も、色々と勉強されていらっしゃると思うので、恐縮ではありますが、サイルさんなどもよく仰っているように、コンバージョンポイントを出来るだけ設計してあげるという点はポイントかと思います。
このコンバージョンポイントの設定がずれてる・間違っているケースも多く、例えばよくあるのは商談や問合せだけしか設定してない等ですね。
そうではなく、資料請求やホワイトペーパーなど、色々準備する必要があります。
とは言え、たくさんコンバージョンポイントを準備すればいいというわけでもなく、まずは深いところ、商談に近いところから準備してあげるのが重要になります。
あとはコンバージョンポイントによって商談化のスピード等も変わってきます。商談を狙いに行くのか、ホワイトペーパーでリードを取りに行くのか、または資料請求でよりその商談化率の高い人たちを狙っていくのかなど、目的によって配信の設計も変わってくるので、どの段階にいるお客さんを狙っていくのかと合わせて、コンバージョンポイントを設計をしていく必要がありますね。
後ほど媒体の話もしますが、媒体ごとに適切なコンバージョンポイントがあるという視点も大切です。わかりやすい例だと、Meta広告でリーチできるユーザーは、そんなに前のめりの状態の人たちではない可能性が高いので、ホワイトペーパーなどをコンバージョンポイントにした方が獲得しやすいです。対して検索広告では、自ら検索をしてやってくるので、問い合わせや資料請求が取りやすい傾向にあります。
田北:
二平さん、ありがとうございます。
それでは次に、里村さんのご意見もお伺いしてもよろしいですか?
■コンバージョンの重み付けの考え方について
里村:
似たような視点にもなりますが、それらのコンバージョンをどういった形で広告配信の中で最適化させるのかという点で言うと、1つはコンバージョンの値、いわゆるビジネスバリューというのを設計するというところですね。
資料請求や商談など、成約に至るまでいくつかのタッチポイントがあると思います。
その、成約に至る顧客の価値、いわゆるビジネスバリューを逆算して、コンバージョンに重みをつけるというようなコンバージョンの設計をし、その値をもとに最適化を図るというやり方です。
もちろん、資料請求一つとっても、資料請求A・資料請求Bによって商談化率とか成約単価などが様々変わってくると思います。それらに対しても重みづけをする形で設計をすることが出来ます。
全ての広告メディアが値をベースにした最適化が図れるわけではないですが、例えばGoogle広告などであれば、「コンバージョン値の最大化」や、ROASベースにした最適化などが、いわゆるショッピングなどではないビジネスモデルでも利用できます。
特に自動入札で人の調整範囲が、どんどん限られてくる中で、こういった値をつけて最適化するというのは、人が介入できるチューニングポイントでもあると思っています。
そのような点も踏まえて広告運用していくと、よりビジネスゴールを達成しやすくなるんじゃないかなと思います。
田北:
ありがとうございます。
確かにコンバージョンによって商談・成約のしやすさは異なるので、重み付けをして各コンバージョンポイントごとに調整するというのは、大事なポイントですよね。
コンバージョンポイント毎の商談率・成約率の違いという話が多く出ましたが、コンバージョンポイント以外でも、商談率や受注率に影響するところはあるんでしょうか?
■リードの獲得ではなく商談・受注を指標とする重要性
二平:
広告媒体という視点もあると思います。
結構色んなBtoB案件を見てますが、検索広告は商談化率が高いことが多いというイメージはありますね。検索をしてやって来ているという点から、意欲が高い状態であることが多いので。
例えばCPCが高い領域だと、資料請求や問合せなど目先のCPAは高く見えるのですが、商談化率、成約率、成約単価などそのリードの先を見ることで、実は意外に成約までの費用は安かったというケースもあります。
Meta広告のホワイトペーパーなんかは、CPAが5,000円~1万円程度で獲得できるけれど、商談化率がめちゃくちゃ低いという場合もあります。
一方で、検索広告だと、CPAは4万円~5万円程かかってしまうけれど、実は商談化率が高いことで、受注単価で見ると安かったということもあって、媒体ごとに商談化率などは変わってくるなと思います。
BtoBはリードを取って終わりじゃなくて、その後がかなり重要になるんです。
リードを取った後までも可視化する、それをもとにチューニングをかけていくというのが、自動入札の進化などもあって、より重要になってきています。
自動入札の進化によって、どの業態でも50~60点の運用は取りやすくなってきてると感じます。じゃあリードは獲得できるようになったけれど、その後の質はどうなのか、という点が今後より求められてくるのかなというふうに、色んな企業様を支援していて思うところですね。
里村:
特に広告代行の場面でよく見られるのが、企業が様々なエージェントに依頼する際、リード獲得が主要なKPIとなってしまう傾向です。あるいは、企業内でチームが分かれており、各チームに異なるKPIが設定されている場合、結果として短期的な目標にフォーカスしてしまうことがあります。これは、全体的な視点からはあまり良くないと思っています。
例えば、目立つ広告や目を引くキャンペーンで一時的にリードを獲得することは可能かもしれません。しかし、実際にはこれらが成約に結びついていないことが多々あります。運用代行をするチームがあったとしても、商談の成約に至るまでのデータを共有し、双方がしっかりと追跡していくことが重要ですね。
■商材特性に沿った広告配信戦略とは
田北:
二平さんが話されていたように、検索を使う能動的なユーザーは、CPAやCPCが高くても、最終的にコンバージョンしやすいというのは、本当にその通りだと思います。そうすると、BtoBの広告を始めようと考えている企業や、一度失敗して止めてしまった企業が再開する場合、検索から始めるのが良いのでしょうか?先ほどのお話にもあったように、コンバージョンに近いところから狙うべきだというお話でしたよね。
ただ、今すぐお問い合わせをしたい、今すぐニーズがあるお客様だけを狙うのも、機会損失になるかもしれないと思っています。リード獲得の際、どのように始めるか、予算の配分なども結構難しい問題だと感じています。
二平:
確かにそうですね。
BtoBの場面では、基本的に課題解決からスタートするケースが多いと思います。社内の問題を認識し、情報収集のために検索を使う流れが一般的ですね。なので、検索はBtoBの重要なチャネルとして、優先して取り組む必要があると考えています。ただ、検索量の上限については、結構制約があると感じています。
商材のタイプによっても、アプローチは変わってくると思います。
たとえば、検索されるビジネスであれば、検索広告を中心に攻めることができます。しかし、検索されないビジネスも多いと思います。例えば、組織コンサルティングなどは、月間でわずか200〜300件しか検索されないんです。このような検索量が少ないビジネスでは、Meta広告を使ったアプローチが効果的です。リードを獲得するためにセミナーを実施するのも良い方法です。ただ、検索も無視できないので、バランスを取る必要があります。
検索量が多い商材、例えば会計システム系のサービスでは、検索広告を中心にしつつ、Meta広告も併用するのが一般的です。結局、商材によって検索数が大きなポイントになると思っています。
田北:
ありがとうございます。
すごくわかりやすい四象限のグラフでした…!
自社の事業・サービスがどれに当てはまるか、というのを見た上で配信していく媒体や配分を選んだ方が良さそうですね。
1-2.視聴者様からの質問回答
■視聴者質問:指名検索配信の是非について
田北:
ここで視聴者の方からの質問に回答していきたいと思います。
「リスティングの指名検索については、指名検索を設置しない方がいいと聞きます。検索結果次第かなとは思うのですが、今でも指名検索をリスティングに利用する方は多いのでしょうか?それとも指名検索を使わなくなる傾向にあるのでしょうか?」
という質問をいただいております。
では、先に里村さんからお伺いできますか?
里村:
この件については、様々な議論があると思いますし、状況によっても変わると思います。
例えば、競合他社が自社のキーワードを使って広告を出している場合、自社サービスのキーワードで検索されたときに、競合の広告が表示されると、競合サイトへの流出のリスクがありますよね。そういう場合は、広告枠を確保する必要があると思います。
しかし、競合が広告を出しておらず、自然検索のトップページと同じ内容のページを広告で出す場合、あまり価値はないと感じています。自然検索のトップで出るページの内容と、広告で出したいサービスのメッセージが異なる場合、たとえば、リード獲得のための資料請求やホワイトペーパーなど、それぞれで役割が明確であれば、両方を出しても良いと思います。
役割が不明確で、一応出しておこうみたいなスタンスで配信するのは意味がないように感じるので出さない方が良いと思いますね。
二平:
私も、本当に状況によるかなと。
例えば、BtoBでテレビCMやタクシー広告などを行うと、その結果として指名キーワードの検索量が増えることがあります。そのタイミングを狙って入札してくる競合もいたりするので、そういう時には、守る意味で広告を出すこともありますね。
また、部分一致という広く拾うようなマッチタイプで入札しなくても拾ってしまうこともあるんです。そして、そこでコンバージョンや競合ワードが生まれることもあって、面が奪われるということは往々にしてあるかなと思っています。
ランディングページをしっかり作り込んで、そこにトラフィックを誘導したい意図がある場合も、広告を出すべきだと思います。
商品やサービスによっても違いがありますし、この間、BtoC商材でテストした際には、(指名キーワードを出稿することで)コンバージョンが減ったりすることもありました。ケースバイケースになるので、試してみるのが良いと思います。
■視聴者質問:ホワイトペーパーを用意できない状況での成果改善について
田北:
ありがとうございます。
続いての質問ですが、
「リスティング広告を出稿しているのですが、コンバージョンを問合せにしていることもあり、ハードルが高く、あまり結果が出ていません。また、商材や社内の都合上、ホワイトペーパーを用意できないのですが、このような状況でお問合せを増加させるにはどうしたらいいでしょうか?」
という質問を頂いております。
二平:
その場合は、資料請求や価格表を用意するのがいいかなと思います。
あまり情報を出せないタイプの商材で、それも難しいでしょうか?お問合せの次は、資料請求や価格表、トライアルをコンバージョンポイントとして設定するのが一般的です。ホワイトペーパーとまではいかなくても、ちょっとハードルを下げる方向で考えて、商品に関連するコンバージョンポイントを用意したいところですね。
また、「無料相談」のような形で、お問合せの表現を変えてハードルを下げるアプローチを考えたいですね。あとは、ランディングページの改善ですね。
田北:
ありがとうございます。
確かにお問合せの見せ方を変えるという方法は、すぐに取り組めますし、効果も高そうですね!ハードルを下げたコンバージョンポイントが用意できない場合は、まずはそちらを試していただきたいなと思います。
里村:
この場合の商材や社内都合というのが、どういった内容なのかにもよると思いますが、ホワイトペーパーを用意するとかなると結構こう、頑張ってやらなくちゃとなりがちですよね。
例えば、ウェビナーも一つのリード獲得コンテンツですし、”お宝コンテンツ”みたいなものが恐らく社内にあると思います。それをうまく見せるなどは、工夫できる点かもしれないですね。
■視聴者質問:自社の成果の競合との比較方法について
田北:
では、次の質問に行きたいと思います。
「自社内だけでリスティング広告を運用していると、今のコンバージョン単価等の実績が競合と比べて高いのか低いのか妥当なのかが、いつまで経ってもわからないことに悩んでいます。これらは広告代理店などに手伝っていただかないと判断は難しいのでしょうか?参考にする方法があれば教えていただきたいと思います。」
とのことです。
確かにインハウスで運用されていると、なかなか競合との成果比較って難しいですよね。
里村さんのご意見を伺ってもいいですか?
里村:
業界で実績のある関係者がいれば、そういった方に相談するのが良いかもしれません。あとはメディア側の人とどれだけ意思疎通ができるか、というのもあると思います。コンバージョンデータなどの公開は難しいと思いますが、競合の”平均値”など少しぼやかした相談の仕方をすると、ヒントになる情報が得られるかもしれません。
また、アフィリエイト広告を出稿している場合、アフィリエイトの成功報酬単価に基づいて逆算することで、競合の大体の目標設定やCPAを見極められるかもしれません。
二平:
確かにアフィリエイトの報酬単価は良い切り口だなと思いました。
あと、コンバージョンポイントによってCPA感はバラバラなんですよね。一概には言えませんが、経験上は、お問合せのCPAは5万円~10万円ぐらいで、安い場合だと数万円ということもあります。10万円を超えてくると少し高いなという印象ですが、LTVなどを加味して、それぐらいのCPAでも問題ない場合もあります。
ただ、本当に商材によって、お問合せだけでも振り幅が大きいですし、資料請求など他のコンバージョンポイントでも同じです。ホワイトペーパーやセミナーのCPAは、5,000円~2万円くらいで落ち着くことが多いですが、これも本当にコンテンツ次第です。
また、プロフェッショナルを紹介するサービスなどで、フリーランスの方などにスポットで入ってもらい、感覚値を聞くのも良いと思います。
私もインハウス側で運用していたからこそ、社内だけの情報では分からないことも多いというのが正直なところです。なので、色々な人に聞くというのが良いと思います。色々な人から色々な数値が出てくると思うので、参考にしつつ、コンバージョンポイントによってCPAは変わるというのを覚えておくと良いですね。
まとめ
第1部では、BtoB領域におけるウェブ広告の役割と戦略に焦点を当てました。コンバージョンポイントの階段設計の重要性、コンバージョンの重み付けと最適化、そして広告メディアごとの適切な戦略の選択が重要であることについてお話しました。
後半の第2部では、BtoB向けの広告媒体や配信手法についてレポートします。
ぜひ後半のレポートもご覧ください。
ブルースクレイジャパンは、今回のセミナーの他にも、デジタルマーケティングに関する無料セミナーを定期的に開催・登壇しております。ぜひご参加ください。
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