2026.09.10 2026.09.10
本記事では、フィットネスチェーン36店舗の広告運用で実際に試した施策の中から、成功・失敗が分かれた4つの検証事例をご紹介します。
検証したのは、配信エリアやキーワード・広告構成、クリエイティブなど、店舗集客の成果を左右する施策です。
当社では、フィットネス事業を展開するチェーン店の広告運用を2年以上担当してきました。
その過程では予約単価が約2倍に悪化し、予約数が約3割減少した時期もありました。
しかし、改善施策と検証を重ね、最終的には予約単価をピーク時から約71%も改善しています。
一連の検証から言えることは、店舗集客では、すべての店舗に同じ施策を当てはめるのではなく、店舗ごとの立地・商圏・来店行動に合わせて施策を設計することが重要だということです。
どの施策が成果につながったのかだけでなく、成功・失敗を分けた要因まで、実際のデータをもとに解説します。
36店舗の広告運用実績と成果推移
広告運用の対象店舗・媒体・コンバージョンの定義
今回ご紹介するのは、フィットネススタジオを多店舗展開する企業の広告運用事例です。
運用期間は約2年、媒体はGoogle広告(検索・P-MAX)、Meta広告、Yahoo!広告です。
主要コンバージョンは「体験予約の完了」、中間指標は「予約フォームへの遷移」(以下「マイクロCV」)としました。
店舗の立地はロードサイド1店舗/商業施設13店舗/駅近22店舗と異なる立地条件の店舗が含まれます。
この立地条件の違いが配信設計を大きく左右しました。
予約単価を約71%改善し、運用店舗数は3店舗から36店舗へ拡大

| – | 運用支援初期 | 成果改善後 |
| 1店舗あたりの体験予約数 | 約 17件/月 | 約 85件/月 |
| 予約単価 | – | 約 71%改善 |
| 運用店舗数 | 3店舗 | 36店舗 |
運用開始後、一時、競合環境の激化や新店舗オープン時の集客効果の低下などにより、一部店舗で成果が悪化し、月間予約数が約3割減少しました。
そこから店舗ごとに配信エリアや広告構成、クリエイティブなどの検証と改善を重ね、1店舗あたりの月間予約件数は約5倍に増加、予約単価は約71%改善しました。
こうした成果改善とともに支援範囲も広がり、当初3店舗だった運用店舗数は、現在では36店舗まで拡大しています。
単に店舗数の増加に伴って予約数が増えたのではなく、「運用規模を拡大しながら予約単価を改善できた」背景には、店舗ごとの条件に合わせて積み重ねてきた検証があります。
店舗集客で検証した3つの施策
36店舗の広告運用では、店舗ごとの成果データをもとに、さまざまな施策を検証してきました。
本記事では、その中から「配信エリア」「キーワード・広告構成」「クリエイティブ」の3つの検証をご紹介します。
| 検証テーマ | 検証したこと | 主な結果 |
| ①配信エリア | 地域キーワードにおいては、店舗周辺の半径指定から全国配信へ広げても成果を維持できるか | 全国配信では予約単価が約4倍に悪化/立地条件に合わせたチューニングが重要 |
| ②キーワード・広告構成 | キーワードの分け方や入札方法によって成果は変わるか | 掲載箇所を重視すると悪化/地域キーワードを切り分けることは有効 |
| ③クリエイティブ | 店舗の立地や来店手段を広告表現に取り入れると成果につながるか | 看板・駅外観を使った広告が複数店舗で成果 |
一連の検証で特に重視したのは、「一般的に正しい施策か」ではなく、「その店舗にとって成果につながる施策か」を実際のデータで確かめることです。
検証① 店舗集客で成果につながる広告配信エリアの設定方法
店舗集客の広告では、実際に店舗へ来店できるユーザーに配信するため、商圏に合わせて配信エリアを設定することが基本です。
では、配信エリアはどこまで絞る必要があるのでしょうか。
また、店舗から「半径○km」のように一律で設定してもよいのでしょうか。
本案件では、あえて配信エリアを全国まで広げる検証と、36店舗の配信実績の分析を行いました。
その結果、配信エリアは単純な距離ではなく、店舗ごとの立地・商圏・来店行動から設計することが重要だとわかりました。
【検証】商圏外の見込みユーザーを狙い、配信エリアを拡張
店舗周辺に配信エリアを限定すると、勤務先から検索する人や転居予定者など、
「エリア外にいる来店見込みユーザー」を取りこぼす可能性があります。
そこで、
「地域名を含めて検索しているユーザーは、その地域への来店意向も高いと考え、
配信エリアを店舗周辺から拡大しても、来店見込みのあるユーザーに対して配信できるのではないか?」
という仮説を立てました。
そこで一部店舗にて、地域キーワードの配信エリアを店舗周辺の半径指定から全国へ変更し、
エリアではなくキーワードで対象を絞る設計を検証しました。
【結果】全国配信では予約単価が約4倍に悪化
検証の結果、地域名を含むキーワードの配信エリアを全国にした場合、
予約単価が半径指定時の約4倍に悪化しました。
一方で、予約フォームへの遷移率は低下していませんでした。
| 広告配信エリア | フォーム遷移率 | フォーム完了率 | CPA(予約完了) |
| 半径指定 | 39% | 4.8% | – |
| 全国配信 | 41% | 1.3% | (半径指定の)4倍 |
全国配信では、予約フォームに遷移する割合はむしろ上昇した一方、そこから予約完了に至る割合が大きく低下しました。
上記のような結果となった要因として考えられるのは、
地名キーワードが示すエリアと、実際に店舗へ来店できる商圏にズレがあったことです。
配信していたキーワードには、市域全体を指す比較的広い地域名も含まれていました。
そのため、その地域名で店舗を探す意向はあっても、「ユーザーが想定するエリア」と「実際の店舗所在地」が離れており、店舗のアクセス(住所)を予約フォームで確認した段階で、来店候補から外れたケースが増えた可能性が考えられます。
つまり、今回の検証では、地名キーワードで捉えられるエリアと、実際に来店につながる商圏は必ずしも一致しないことがわかりました。
配信エリアを広げる場合は、地名キーワードが示す範囲と、実際の店舗商圏がどの程度一致しているかまで考慮する必要があります。
【エリアターゲティングの最適解】立地条件と店舗ごとの商圏に合わせて配信範囲を設定する
全国配信の検証も含め、これまでの配信実績から見えてきたのは、店舗ごとの商圏を踏まえてエリアを設計することの重要性です。
店舗集客のエリアターゲティングでは、「店舗から半径○km」と一律に設定するのではなく、
立地条件や実際の商圏に合わせて配信範囲を変えることが重要です。
実際に36店舗の配信実績を分析したところ、設定半径の大きさと予約単価の相関係数は0.05で、ほぼ相関がありませんでした。
半径を狭くすれば(=店舗から近ければ)成果が良くなる、広くすれば悪くなるという単純な関係ではありません。
本案件では、まず店舗をロードサイド・商業施設・駅近に分け、それぞれの来店手段や行動圏に合わせて配信エリアを設計しました。
| 立地区分 | 設定半径の中央値 | 設計の考え方 |
| ロードサイド | 約 4km | 車での来店を前提に生活圏を広く押さえる |
| 商業施設内 | 約 3km | 施設の商圏データから「車や交通機関でどこまで通えるか」を判断 |
| 駅近 | 約 1km | その地域に住む人・働く人の行動圏を予測 |
ただし、「ロードサイドなら4km」「駅近なら1km」と立地条件だけで機械的に決めているわけではありません。
たとえば、商業施設内の店舗だけでも、実際の設定半径は約1km~6.5kmと最大6.5倍の差があります。
これは、同じ商業施設内の店舗であっても、施設の規模や立地、周辺の居住者・就業者、交通手段などによって、実際の商圏が異なるためです。
施設側が保有する来館者の商圏データなども活用しながら、「その店舗にはどこから、どのように来店するのか」を店舗ごとに捉えて配信範囲を調整しています。
駅近店舗でも同様です。本案件では、都市中心部では約2km、郊外・住宅地では約1km(中央値)と配信範囲を変えています。
都市中心部では近隣住民だけでなく、そのエリアへ通勤する就業者も来店対象になるためです。
郊外・住宅地に関しては、居住者の生活圏がそのまま商圏なので、狭く設定したほうが成果が良い傾向にありました。
このように立地条件に合わせて配信エリアを設計した結果、店舗ごとの予約単価も一定の範囲に安定しています。
ロードサイド・商業施設・駅近と立地条件が異なる中でも、全店舗の予約単価は最もCPAが低い店舗と最もCPAが高い店舗で、約2.1倍の範囲に収まり、さらに半数の店舗は約1.2倍という狭い範囲に収まっており、店舗間の予約単価のばらつきを抑えられています。
つまり、店舗集客のエリアターゲティングは、立地条件を起点に配信範囲を設計し、さらにその土地の商圏や来店行動に合わせて店舗単位でチューニングすることが重要です。
こうした地域ごとの商圏や来店行動の違いは、AIや自動最適化だけでは捉えにくい部分であり、本案件でも店舗ごとの特性を分析し、配信エリアを緻密に設計しています。
検証② 店舗集客の検索広告におけるキーワード・広告構成の分け方
【失敗】入札をコントロールするために広告構成を分け、予約単価が約8倍に悪化
本案件では、過去データから「上部インプレッションシェアが70%以上のとき、9割前後の確率で予約が発生する」傾向がありました。
そこで、上部インプレッションシェアを高い水準で維持できれば、さらに成果を伸ばせるのではないかと考え、ある郊外店舗で地域キーワードを別キャンペーンに切り出しました。
あわせて、入札戦略を「コンバージョン数の最大化」から「個別入札」へ変更し、掲載位置をコントロールする設計に切り替えました。
結果は下記のようになりました。
■ 最上部インプレッションシェア 強化後の数値
| – | 予約完了数(CV) | 予約完了率(CVR) | 予約単価(CPA) |
| 施策実施直後 | 約 14件 | 約 14% | – |
| 翌月 | 約 1.5件(9割減) | 約 3%(- 80%) | 約 8倍 |
狙いどおり最上部インプレッションシェアは上昇し、施策実施直後は予約完了数・予約完了率ともに改善傾向が見られました。
しかし翌月には一転し、予約完了率は14%から3%まで低下、予約単価は約8倍に悪化しました。
本施策で予約単価が悪化した要因として、主に以下の2点が考えられます。
- 表示位置を優先して個別入札に切り替えたこと
個別入札では、入札価格を直接調整できるため、掲載位置をコントロールしやすくなります。
一方で、コンバージョン実績をもとに「どのユーザーに、どの程度の入札を行うか」を自動で最適化する機能が働きません。掲載位置をコントロールすることを優先した結果、コンバージョン獲得に向けた最適化とのバランスを崩してしまったと考えられます。
- 「上部インプレッションシェアは高いほど成果も良くなる」と捉えていたこと
改めてデータを分析すると、上部インプレッションシェアが一定水準以上の場合に予約が発生しやすい傾向はあるものの、シェアをさらに高めるほど予約単価が改善するわけではないことが分かりました。
ある一定のレベルからさらにシェアを高めれば、予約単価も改善するという関係ではなかったのです。
シェアの下限は担保すべきものですが、上限を追う対象ではなかったといえます。
最終的には元の広告構成に戻すことで予約単価などの成果も安定し、上部インプレッションシェアは、入札の強弱を調整しながら適切な水準を維持する形が有効でした。
【成功】キーワードの種類の違いでグルーピングし、成果差を可視化
一方で、キーワードの種類ごとに成果を分析・判断できるようにするためのグルーピングは、改善につながりました。
もともと一部の店舗では、地名を含むキーワードと汎用キーワードを同じグループで配信していました。しかし、検索クエリ別に成果を分析すると、両者には明確な差が見られました。
| – | クリック率 | 予約単価 | 予算配分 |
| 「地域」を含むクエリ | 17% | 約 17%安い | 40% |
| 「地域」を含まないクエリ | 9% | – | 60% |
地名を含むクエリは、地名を含まないクエリと比べてクリック率が約1.8倍、予約単価も約17%低い一方、予算配分は約4割にとどまっていました。つまり、成果の良い地名ありのクエリよりも、地名なしのクエリに多くの予算が使われている状態でした。
そこで、地名を含むキーワードを別グループに分け、予算配分や入札、検索語句などを個別に分析・調整できる構成へ変更。地名ありのキーワードに特化してPDCAを回した結果、予約完了率は約1.6%から約5.4%まで改善しました。
この結果から、キーワードを一律にまとめて運用するのではなく、成果差があるキーワードはグルーピングを分け、それぞれの特性に合わせて最適化することが重要だと考えられます。
検証③ 店舗集客の成果を高める、立地情報を活用した広告クリエイティブ
【仮説・施策】来店手段に合わせたクリエイティブデザイン
出発点は、すでに手元にあった勝ちパターンでした。
「エリア名 × 商材名」がコピーのバナーが、複数の店舗でCV獲得の主力になっていました。
このコピーは効いている。だとすれば、掛け合わせる画像を変えれば、店舗ごとにもっと刺さる形にできるのではないかと考え、来店手段に合わせて、画像素材を2方向に展開しました。
① 車で来店する層に向けて:道路沿いの看板に見立てる
道路沿いの野立て看板に広告が掲出されている様子を作り、背景に道路と走行中の車を入れました。
看板の中には「施設まで直進500m ↑」という道案内を配置し、運転中に実際の看板を目にする体験を、そのまま広告の中で再現する狙いです。
② 駅を使って通う層に向けて:最寄り駅の駅舎を見せる
駅舎の実写を主役に据え、「駅より60秒」というアクセス情報を重ねました。毎日通っている駅が写っていれば、駅利用者の目に留まりやすいのではないかという仮説です。
いずれも共通しているのは、「その人が実際に通る風景」と「そこから何メートル・何秒か」を組み合わせた点です。

【結果】立地訴求による成果と店舗ごとの違い
結果、複数店舗で良い結果が出ました。
ある郊外店舗では「エリア名+業種名 × 看板」が獲得効率の最も高いクリエイティブに。
ある都市部店舗では駅外観バナーが予約を獲得し、クリック率は全クリエイティブ中2位、キャンペーン全体の予約完了率の引き上げにも寄与しました。
【成功要因】立地訴求が成果につながりやすかった店舗の特徴
成果につながった共通点は、ターゲットの来店手段に合わせて、店舗へのアクセスを直感的に伝えたことです。
車で来店するユーザーには道路や看板、電車を利用するユーザーには最寄り駅を見せることで、「自分が普段使うルートから通える店舗」であることをイメージしやすくしました。
単に目を引く画像を使うのではなく、店舗の立地や来店手段に合わせて「通いやすさ」を具体的に見せることが、成果につながった要因の一つと考えられます。
まとめ|店舗集客の広告は「店舗ごとの違い」を捉えて改善する
今回、36店舗の広告運用を通じて、配信エリア・キーワードや広告構成・クリエイティブの3つの観点から検証を行いました。それぞれの検証から得られたポイントは以下のとおりです。
- 配信エリア:一律の半径ではなく、立地や商圏、来店行動に合わせて店舗ごとに設計する
- キーワード・広告構成:成果差があるキーワードは適切にグルーピングし、それぞれの特性に合わせて最適化する
- クリエイティブ:立地や来店手段を踏まえ、「その店舗への通いやすさ」が伝わる訴求を設計する
3つに共通するのは、全店舗に同じ設定や施策を当てはめるのではなく、店舗ごとの違いを捉えて運用することです。
同じチェーンであっても、店舗によって商圏やユーザーの来店手段、成果につながる検索行動は異なります。実際に本案件でも、店舗ごとのデータを分析しながら検証と改善を重ねることで、1店舗あたりの月間予約件数を約5倍に増やし、予約単価をピーク時から約71%改善することができました。
店舗集客の広告運用では、媒体の自動最適化に任せるだけでなく、各店舗の立地や商圏、実際の成果データをもとに仮説を立て、店舗単位でPDCAを回していくことが重要です。
浅田万里子
EC・呉服・フィットネス等幅広い業界を経験。店舗集客クライアントの新店立ち上げでは過去最高予約数や最短3ヶ月での黒字化を伴走支援。 計測環境の見直し、実データ連携などによる売上・成約にコミットする運用を実施。
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